-劇場映画時評-
どんな説教されるのかと思っていたら、言葉にならないまとまりのない言葉(表現)が羅列され、挙句の果てに「はい、さようなら」と挨拶されてどっかに行ってしまった。 どんな感情よりもまず、"いたたまれなさ"が飛び出してくる映画体験は初めてかもしれない…
改めてこれまでのシリーズ作品を鑑賞した上での鑑賞。 多くの語り口があると思うのだが、三つの要点にまとめて語ってみたい。
本当に素晴らしい。観たいものを超えてきた。 アフターNWHの今、「運命に抗う物語」を本気で描こうとする姿勢に感動してしまった。
凄まじい作品だった。 決して劇的とはいえないが、確かに切迫した危機的状況として提示される有限の状況設定で、それぞれのバックボーンや尺度、価値観を尊重しながら重ねられる対話は、何よりも事態を改善しようとする人々の選択を賛歌する。その選択に至る…
正直残念な出来だった。ドラマ版でフラッシュポイントの話の大筋を理解していて、"時の流れを身勝手に変えてはいけない(色々酷いことになるから)"というフィクション内で深く共有される価値観に則り、母の死を受け入れるという終わりを知っている状態での…
白人至上主義者女性のコミュニティ「アーリア人団結をめざす娘たち」を設立した女性たちの行動を全編ワンカットで追うスリラー作品。
大人気シリーズ第十作目。 エンタメ作品において、どれくらいファンに寄り添うのかはひとつの課題だろう。ファンが求めてるものをそのまま提示することは、期待通りとも言えるし、同時に想像の域を出ない。しかしその想像の域を超えるようとすると、期待外れ…
間違いなく大傑作だった。 今年観た作品の中でも最も心を抉った作品になることは間違いない。
オリジナリティーあるギミックとアイコニックなホラーキャラクターを作り出したホラーシリーズ2作目の宿命として、「既にネタばらししたギミックを再度使わなければならない」と「ストーリーの為にホラーアイコンを設定や殺し方を盛っていかなければならない…
最強の娯楽作品とは、観客を共犯者にしてノリに乗せてくれるか否かに掛かっていると思っている。近年で最もそのことが成功していたのは『RRR』で、そのノリに乗せられる感じは、正直暴力の是非に対して判断能力を奪うほどの危険な領域にまで達成されていた。…
俺がTRIGGER作品に求める、なんだか分からないもの全てを混沌なままに肯定する姿勢、そして友情や愛情、そういった純粋でストレートな想いを描こうとする姿勢、そのどちらもが画面全体にスパークしていて、もう最高でした。
いい映画だった。とてもいいガキんちょ共の映画だった。 原作での言及や、プロデューサー陣が飛騨市を「日本のキャッスルロック」だとしてロケ地に選んだなど、明確な『スタンド・バイ・ミー』意識をされた作品であり、登場人物の相関や「線路」というモチー…
とにかくびっくりするほどファンの為の映画なのだ。ニコラス・ケイジがニコラス・ケイジを演じる映画でありながら、ニコラス・ケイジの為の映画ではなく、"彼のファンの為"の映画なのだ。
ドリームワークス作品の前作、『バッドガイズ』を超える面白さ! そして前作『長ぐつをはいたネコ』を超える面白さ!! 期待値は高くなかったが、今年最高のアニメーション作品であろう『スパイダーバース アクロス・ザ・ユニバース』と双璧を為すことは間違…
映画の冒頭、ポスターのイメージから圧倒的に乖離したモノクロで映される侍達の殺し合う時代劇的な映像に衝撃を受ける。現代劇じゃなかったか?と頭をよぎる間もなく、その映像の良さに目を奪われた。 完全なモノクロではなく寒色を少し残し、赤色がアクセン…
大傑作大傑作大傑作!!!! シャマランの作家性である「見えざる事物との対峙」と「ロールを割り当てられた者達の物語」がフルスロットルで駆動していることに大興奮するだけでなく、会話ばかりのワンシチュエーションスリラーを極端なズームアップやインア…
大傑作。本当に大好き。 1回の観賞じゃ絶対飲み込みきれない情報量。場面毎のテンションのアップダウンも激しくて、感情の浮き沈みがどう組み立てられているかも1回じゃ飲み込めない。それ故にか、シンプルでストレート結論やド派手な映像表現のみが心に焼き…
大傑作。 最近特に「映画に関する映画」というのが続けて公開されている。それについては『エンパイア・オブ・ライト』のレビューで簡単に整理したので割愛するが、 本作はそれらの作品と完全に異質なことをやっていて、明らかに異常だ。
本作は2021年の米国アカデミー賞を賑わせた『ファーザー』の監督、フローリアン・ゼレール監督の最新作である。元々監督本人が携わった戯曲に家族三部作(The father ,the son, the mother)があり、その二作品の映画化ということである。 三部作ということ…
全方向に喧嘩を売りまくり「特権を持った人間は浅ましい本性をさらけ出す」と語る。そこには富裕層と貧困層の垣根はないのだ。貧困層の人間がひとたび"特権"を持てば富裕層の如く特権を行使するという三章があるおかげで、プロレタリア的な視点だけではなく…
実在の人物、修道女ベネデッタの記録に基づき描かれた本作は、彼女が真に狂信的な信仰を持つ存在であるが故に、キリスト教の欺瞞を仕組みの中から暴き出すのだ。彼女にその意図はなく、されど意図がないからこそ、その破綻は必然的に暴かれる。その非作為的…
これまでにあった"映画についての映画"は、言ってしまえば「映画の力を信じる人」によって撮られた作品である。映画とは人生だと、映画とは魔法だと、映画は人や現実を変えうると、実感を以て言い張れるもの達の映画だ。 だが、本作は日常にあるただの"映画"…
本作の予告編を観た時「違う、そうじゃない」と強く思ったのをよく覚えている。何故ならアントマンシリーズはMCUにおいて唯一「普通の人」の話が出来るシリーズであったし、能力よろしく"ミニマム"な視点で家族や日常の話を展開できたシリーズだった。同じテ…
ヒロインであるソレはイジュンに孔子からの引用を口にする。 作品内でどう字幕されていたかは定かではないのだが、同じ意味のものをネットから拝借する。 「知人は水を楽しみ、仁者(道徳的に完璧な人)は山を好む。」 この言葉を踏まえて本作をみると、なん…
『タイタニック』見た事ある?という作中での言及がされたとき、本作は『タイタニック』の真逆の作劇を行っているのだと気づいた。 二作品には共通点がある。基本的には乗り物に乗っている時間がほとんどであり、初対面の男女が関係を深めていくという話にな…
上映開始5分。既に充満している緊張感は、教会の奥の一室で始まる「対話」が、複雑な関係性で結ばれた者同士の間で起こることを予感させる。この時点でもう、私はこれから始まる「対話」に耐え切れるのか不安に押しつぶされそうになった。
卒業を目前とした高校生達(主に女子高生が中心)は"終わり"を前にして何を想い、何を選択するのか。 4つの人間関係が作中でフォーカスされるなか、片や卒業を待ち遠しくしている人、片や卒業したくないと考えている人、そして卒業が=別れである人。 卒業を…
本作は何よりも"声"にひたすら向き合う映画だ。 ハーヴェイ・ワインスタインという映画界の絶対権力者の犯罪を暴き出す為に、NYタイムズの記者達(特に主人公たちミーガンとジュディ)が行った手段はひたすらに"声"を聴くことだ。声とは証言であり、告発であ…
ヒトラー(ナチス)は定期的にぶちのめして笑いものにすべきと考えているので、ヒトラーものは必ず劇場に行くことにしてる。 最近だと『ペルシャン・レッスン』や『アウシュビッツのチャンピオン』等が公開されている訳だが、その中でも本作は極めてよくでき…
これは"時代"が破壊する文化や人生とそこから芽吹き、新たに続いていく文化や人生への賛歌だ。 人は時代という大いなる流れを前に無力。だが、一個人同士が感情や肉体をぶつけ合い、一つの集合体へと至る時、そこに帯びる熱こそが時代の突き動かす燃料となる…