劇場からの失踪

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フラッシュ・ゴードン 4K 劇場映画批評127回 地球において"英雄"的な存在は他の星においても"英雄"たる

題名:『フラッシュ・ゴードン 4K』
製作国:アメリカ

監督:マイク・ホッジス監督

脚本:ギルバート・テイラー

音楽:クイーン ハワード・ブレイク

撮影:ギルバート・テイラー

美術:ダニロ・ドナティ
公開年:2023年

製作年:1980年

 

 

目次

 

あらすじ

謎のエネルギー光線によって月が軌道から引き離され、地球に急接近する。その原因が地球外生命体にあると確信した科学者ザーコフは、あと10日で月と地球が衝突すると予言。ザーコフは大惨事を阻止するべく、偶然居合わせた人気アメフト選手フラッシュ・ゴードンと旅行業者の女性デールに銃を突きつけて自作のロケット船に乗り込み、無慈悲な皇帝ミンが支配する惑星モンゴへ向かう。

引用元:

eiga.com

 

※以降ネタバレあり

 

快活かつ英雄ぜんとする立ち振る舞いの揺るがなさ

最強の娯楽作品とは、観客を共犯者にしてノリに乗せてくれるか否かに掛かっていると思っている。近年で最もそのことが成功していたのは『RRR』で、そのノリに乗せられる感じは、正直暴力の是非に対して判断能力を奪うほどの危険な領域にまで達成されていた。

その点でいうと本作は、見事に"最強の娯楽作品の条件"を達成していると思う。
アメフト界のヒーローであるフラッシュ・ゴードンが、惑星モンゴにおいても"ヒーロー"的に行動して、世界を救う絵空事なストーリーや謎の惑星と言いながら、地球となんら変わりない言語と価値基準、文化が根付いている設定の無茶苦茶さ。要するにそれらはツッコミどころと呼ばれるものな訳だが、それに対して「本作は受け入れて楽しんだ者勝ち」だと思わせるだけのパワフルさに満ちている。
その要因にはまず、クイーンの最強のサントラがあるだろう。また世界観を構築する衣装や美術、VFXのちからの入り様も一因だろう。だが、自分としては主人公の快活かつ英雄ぜんとする立ち振る舞いの揺るがなさにこそ、そのパワフルさがあると感じた。
現代において、あの手の主人公は新たに生み出されているのだろうか。彼は言わばジョックスで、地球において、陽キャと称される部類であろう。運動もできて顔もよく、白人でブロンド、そういった才能と環境によって彼はある種の万能感と特権を備えた存在だと言える。そういった社会の中での優位性は学校やコミュニティを超えれば途端に崩れ去るはずなのだが、本作その優位性をそのままに他の惑星でそのまま英雄になってしまう。

地球において"英雄"的な存在は他の星においても"英雄"たる

彼はブロンドでイケメンだと称されてモテるわけだし、彼の見るからにある腕力は通用し、なんならアメフトのタックルは有効打になりうる。彼が果たして頭がいいかは分からないが、彼の頭脳のレベルで大体のことは操縦なども事足りそうなのだ。
つまり、地球において"英雄"的な存在は他の星においても"英雄"たるという前提に基づいているのだ。これは昨今の異世界転生ものを陰キャのルサンチマンに基づく現実逃避コンテンツとするなら、本作は陽キャの絶対的な自信に基づく現実反映コンテンツと言えるのではないだろうか。
それは他惑星で自分の所属するアメフトチームのチーム名とポジションを述べるコメディーシーンにも表れているように思う。彼の英雄的行動の裏には常に地球の社会での優位性があり、それを疑わずに正しいことをある意味機械的に選択していくのがフラッシュ・ゴードンなのだ。
まさに白人ヒーローの代表格という感じで、時代背景も踏まえてそこの部分を面白く見せてもらった。敵の
ザーコフがアジア系っぽかったりするのにも思うことがないことはないが、そこは正直どうでもいいと割り切るべきだろう。

ツボなのは、冒頭の旅客機の中で行った始めて英雄的行動である「緊急不時着」が、ザーコフを倒す結果になったところだ。ザーコフが死んだのかは「The End?」なので定かではないが、あそこはかなり好き。

総評として、劇場で見ることが出来てよかった。最強の娯楽作品の1つであることは間違いない。