劇場からの失踪-映画批評ブログ

映画をこよなく愛するArchによる映画批評

世界中のショートフィルムに出会えるサイト「BSSTO」おススメ作品を紹介!!

今回の記事は番外編。題しまして『ショートフィルムの世界』――。

皆さん、「Brillia SHORTSHORTS THEATERONLINE ONLINE」(以下BSSTO)というサイトご存じですか?

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こちらのサイトでは世界各国の素敵な短編映画を無料で観ることが出来ます。

そのほとんどが現状レンタルしておらず、見ることが難しい作品ばかり。現状このサイトでしか見れない作品も多く取り扱っているわけです。

短編にあまり造詣のない自分が興味本位でサイトを覗いてみたところ…まるで宝箱じゃないですか…とドハマり。

 

すっかり一期一会のショートフィルムの魅力に憑りつかれたわけです。なので今回はその勢いのままおススメしたい作品を紹介,そして批評を行っていきたいと思います。

まだ観てない人向けの紹介,観た人向けの批評という形になっているので二度楽しめる!というスタンスでやってみようと思います。

 

しかしこの記事を読むうえ、またサイトを利用する上で注意していただきたいことがあります。

それは「ほとんどの作品が期間限定であること」です。VODのように半永久的に観れるわけではなく、上映期間が決まっていて、この記事で紹介した作品が必ず観れるとは限りません。なのでそこだけはご理解お願いいたします。

 

ですが、読めばショートフィルムの可能性や素晴らしさを少しでも伝わるような記事に致しますので是非!

 

sst-online.jp

 

 

ショートフィルムの魅力:ワンアイデアで完成する作品「二つの窓/Two Windows」

制作:ドイツ 監督:Tim Ellrich & Leonhard Kaufmann

上映時間:10:18 配信期間:~2020/7/14

【あらすじ】

へルムトはテレビのアンテナを直すために、4階建ての窓の外に立っている。隣人のワルターはそれを自殺だと勘違いし、一緒に飛び降りようとしてしまう。 引用元BSSTO「Two Windows」

 

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【紹介】

これぞ、ショートフィルムの魔法!といった作品です。ショートフィルムが長編作品に対して有利なのは「ワンアイデアで撮れる」という点です。もしワンアイデアで長編を撮るのあれば、ワンアイデアに1~2時間を引っ張るだけの力が必要なわけです。しかしショートフィルムという5~15分程度の尺であれば、綺麗にワンアイデアだけでまとまるわけなのです。

本作におけるワンアイデア、それは「窓の外でのコント劇」です。窓の外という奇天烈な舞台設定とそこに不相当な隣人との会話劇。長編をこのワンアイデアで作ることは難しい。だが、短編なら最高の題材になってしまう!そんな魅力の詰まった作品だと言えます。

 

【批評】※ネタバレ注意

本作が面白いのは隣人という関係を"窓"というモチーフを題材に描いているところです。突然ですが、皆さんは窓越しに道を歩いている人を見るという経験などはないでしょうか。また逆に道から見上げるようにして部屋の中を探ろうとしたことはないでしょうか?

扉と違って本来、人の出入りのない"窓"はガラス越しに「見る,見られる」という関係を象徴したもので"視線の出入りする"場所であるといえるのです。それは彼ら二人の相互にばれないように気にしていて、生きる糧を貰っているという関係に非常に結びつくことなわけです。

それらを通して本作が描いているのは隣人愛。人は共生して生きていくもの,だからこそ隣人同士共に生きていこうと語っているわけです。

知らないうちに誰かの生きる糧になっている。そんな暖かいライフハック、素敵じゃないですか。隣人づきあいの薄くなってしまった現在の日本にこそ相応しい作品になっていると思います。

 

ショートフィルムの魅力:行間を読む楽しさ「暗くて不気味に静かな日/It Was Dark And Eerily Quiet」

制作:スイス 監督:Mirella Brunold & Nina Calderone

上映時間:5:05 配信期間:~2020/7/21

【あらすじ】

ある海岸に不思議な男が流れ着き、長く空き家になっていた廃屋に住み着いた。村の人々が訝しがって観察を続けていると、その男は空に向かって大きな網を張った。そして次第にその秘密が明らかになってくる。/span> 引用元BSSTO「It Was Dark And Eerily Quiet」

 

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 【紹介】

短編といえば"アニメーション"というジャンルを紹介しないわけにはいかないでしょう。中でもかなり異様な雰囲気を放っていたのがこの作品。灰色世界を基調に,シルエットを意識した空気感が特徴。余談ですが前回紹介した「ザ・ウォーカー」に似た絵面になっていましたね。

 

本作を取り上げた最大の理由は"上映時間5分"という短さです。その尺はショートフィルムでもかなりの短尺、情報量の少なさに作品になるかならなかのギリギリのレベルだと言えます。しかし露骨な情報欠如は行間を埋めることを余儀なくさせ、観客に物語を委ねる形になるわけです。

正直、この行間と読むという行為は長編でも行うべきことではあります。しかし、短編の方がやりやすい。気軽に物語に外形を想像して楽しむことが出来る訳です。

そんなショートフィルムの一種の魅力である"行間を読む"行為の楽しさが伝わってくる作品になっています。

 

【批評】※ネタバレ注意

自分が今作の"行間"をどう読んだのか、書いてみようと思います。と言っても登場人物の背景について予想するなんてことはしません。「何を描こうとしているのか?」?というテーマについて考えたいと思います。

本作が描いているのは「マジョリティーとマイノリティーの軋轢」だと思います。マイノリティーとの対立ではなく、軋轢。互いに直接的な接触はなくとも互いを意識してしまうような関係をマジョリティー視点で寓話的に描いているのです。

マジョリティーというのはマイノリティーを"劣っている"ものとしてみようとします。しかし実際はマイノリティーの方が優れていたりすることは多く、それに対してマジョリティーは素直に受け入れられないというのもよくある話です。有名な話は「地動説と天動説」などではないでしょうか。マジョリティーほどマイノリティーを強く意識し、頼ろうとしない。しかし決まってマイノリティーは気にも留めていなく、マジョリティーの独り相撲だったりするわけなんです。

 

つまりは「マジョリティーのコンプレックス,一人相撲」を描いているわけです。

 ↓(似たようなモノクロ世界を構築した『ザ・ウォーカー』の記事)www.arch-movie.com

 

 

 

ショートフィルムの魅力:マイベストが必ず見つかる「不思議な雑貨屋さん/Something to do with love」

制作:フランス 監督:Luc Serrano

上映時間:8:06 配信期間:~2020/7/31

【あらすじ】

夕暮れ時、一人の男性が古い雑貨屋に訪れ、店主に不思議なお願いごとをしている。そのお店には様々な古道具が並び、店主はそれらを次々と男に手渡す。男性が求めるものはある思い出。ふたりは見つけることができるだろうか? 引用元BSSTO「Something to do with love」

 

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【紹介】 

 この夢のようなサイト「BSSTO」でショートフィルムを見漁った中で一番気に入った作品がこの「不思議な雑貨屋さん」です。

皆さんは背中を何かが走るような感覚、そんなゾクゾクする体験を映画で感じたことはありますか。これはもう個人的な領域で伝わるか分からないのですが、「ハリーポッター/賢者の石」のオリバンダーの店のシーンや「トイストーリー2」のウッディーが修理されるシーンが個人的にはそれに当たります。それらのシーンが共通しているのは「細やかな音と仕草で居心地の良い空間」を映像で作り出していることで、自分の好みにドンピシャだったわけです。

短編は数多くあり、そして短尺であるため沢山観ることが出来ます。絶対にあなた好みのドンピシャな作品に出会えるはず。

 

【批評】※ネタバレ注意

本作は視覚や聴覚、そして味覚まで利用して感覚記憶を呼び覚まし、忘れてしまった記憶を思い出そうとします。この五感と記憶を結び付けて思い出すという手法が実に面白い。何かを思い出すとき、特に何気ないことをふと思い出すときのきっかけは、些細な五感と記憶の結びつきだったりします。そんな何気ない体験を提供するお店は斬新な設定に思います。

この突飛な雑貨屋さんの設定も日常に寄り添ったことを行っているせいで、現実に本当にありそうな妙なリアリティーを感じさせるわけです。話が進むにつれて観るこちら側も感覚が鋭敏になっていく…"感じる"という行為の素敵さが詰まっている作品になっています。

 

最後に

これまでに紹介した三作は氷山の一角に過ぎません。

 

ショートフィルムはどれも独自の個性を放ち、どれをとっても実験的で素敵な"ワンアイデア"を元に制作されています。だからこそ、是非サイトに訪れて貴方のお気に入りを見つけてみましょう。そこにはショートフィルムとの運命の出会いがあるかもしれません。

sst-online.jp