劇場で観た作品を"ネタバレなし、短め"に未来の話をする劇場批評回「劇場から失踪」第6回
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不器用な3組,6人が"人を想う"、その難しさや尊さと向かい合う。
なんでだろう。彼ら,彼女らの未来が幸福に満ちていることを願わずにいわれない。
さぁ、未来の話をしようぜ。
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目次
劇場批評回「劇場から失踪」第6回、今回紹介するのは「殺さない彼と死なない彼女」です。
今作は3組,6人の不器用な人間関係を描いています。
何にも興味が沸かなくなった無気力な彼 小坂と自分が嫌いな死にたがりの彼女 鹿野があることをきっかけに出会い、同じ時間を過ごしていく。
キャピ子は全人類に愛されたい。誰にでもぶりっ子して愛想を振りまく彼女がいつか、満たされた時死んでしまうんじゃないかと幼なじみの友ジミ子は心配する。
毎日好きだと告白をするのが日課な撫子と、それに対して僕は好きじゃないよとあしらう八千代。
これら6人の不器用なまでの人付き合いを3つの空間軸で描いている。
人を想う
今作には現実味がない。自然光で満ちた柔らかな映像や、作中の言葉遣いの台詞感や特に「キャピ子」や「ジミ子」なんて変な名前が浸透していて、決してリアリティに重きを置いていない。
しかしながら何故にこうも寄り添ってしまうのか。
いつのまにかその不自然に慣れていき、キャラクター達のことが好きになる。
映画にこちらが寄り添いその現実味のない、ファンタジーな世界に入り込むように共感を覚えてしまうのだ。
そんな世界で彼ら,彼女らは互いを想い合っていく訳だが、今作はいわゆる「キラキラ青春ムービー」ではない。
今作の根幹にあるのはラブストーリーではなく、"人を想う"ということだ。
そしてその気持ちの一方通行な寂しさや尊さを描いているのだ。
人を想うという行為が幸福な未来に導いてくれる。そんな風に結論づけていると私は感じた。
最後に
絡まった糸が解れていくように本作は進み、3つの物語に一本の繋がった糸があることに気づく。これが凄く気持ちがいい。原作を上手く改変したそうで脚本がいい仕事しているなと思った。また、劇伴や主題歌を担当した奥華子さんもこの作品と世界観があっていて涙腺を刺激してくる。
彼らのこれからが観たい。これほどまでに幸福で満ち足りた人生を願わずにいられないと感じた作品は久しぶりだ。(ハッピーデスデイ1&2以来)
どうかこれからも同じときを2人並んで歩いて行ってほしい。
そんななんてことない光景が幸せだって僕らはこの作品に教わったから。