劇場からの失踪-映画批評ブログ

映画をこよなく愛するArchによる映画批評

殺人鬼の茶番劇を下す絶対の法廷「テッド・バンディー」劇場映画批評5回

 
劇場で観た作品を"ネタバレなし、短め"にまるで陪審員の前で大立ち回りするかのように書き連ねる劇場批評回「劇場から失踪」第5回
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「極めて邪悪、衝撃的に凶悪で卑劣」
法廷で判事が最後に彼の残忍さを表した言葉である。
美しい美貌とIQ160を超える頭脳で30人以上の女の命を絡めとったシリアルキラーの語源となった実在の殺人鬼"テッド・バンディー"
しかし、その中に一人だけ確かに彼が愛した女性がいた。
生かされた彼女の苦悩の年月とテッド・バンディが法の下に裁かれるまでを描き出す。
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 目次

 


今回「劇場からの失踪」で紹介するのは12月公開の「テッド・バンディー」
今作は実在した殺人鬼の死刑執行までを描いた作品だ。
 

CAST

監督はジョー・バーリンジャー。すみません初めて聞いた名前でした。

主演を務めるはザック・エフロン。ザック・エフロンはこれまでそのチャーミングな外見で数多の女性を落としてきた。
それは映画の中の出来事だけでなく、それを観る観客の女性をもまた虜にしているという意味合いも含む。そんな彼だからこそ今作のテッド・バンディを演じるにふさわしい。
まさかあのハンサム俳優の彼が連続殺人犯な訳がないと、彼の過去作の全てが作品を跨いで訴えてくる。
これはナイスなキャスティングで、監督がザックエフロン以外のキャスティングはないと言っていたのも頷ける。
 

殺人鬼の愛

彼は30以上の女性を残忍に殺していた。最後にその被害者達の名前がエンドクレジットに羅列されるシーンが実在の人間の物語だと強調している。
しかし、1人殺されなかった女性リリー・コリンズ演じるリズがいた。
本当に彼女を愛していたからだ。しかし、全くもってそこに愛の美しさは感じられない。
彼の人生は嘘に満ち溢れていた。裁判での嘘の通しっぷりは狂気だ。彼は精神鑑定において異常はなかったらしい。その完成度は嘘の自分を演じることが日常となっていた彼にとってもはや演技ではなく、彼の中では事実となっていたのだと思う。
それならば彼の愛が、本当の物なのか誰が区別出来るのだろう。そこには彼の歪さばかりが露呈するだけである。
 
 
また今作の特徴として実在の殺人鬼を描くとしてここまで血生臭さが無い作品もない。
今作はそういった肉体的描写よりも精神的描写に特化していると言える。
リズは彼と共にした記憶に蝕まれ、今にも首に彼の手を感じ、窒息しそうであると語った。
本当は殺されていたのかもしれない。恐ろしい犯罪が裏で行われている中、何も知らずに娘を預け、体を許していた事に吐き気がする。
そんな誰よりもテッドの近くに居たからこそ、苦痛も描かれていて、これは殺人鬼映画のカテゴライズにおいて今作特有のものであると思う。
 
 

法が導いた真実

今作MVPを挙げるならば、マルコビッチ演じる判事であると思う。
彼は作品の中で法の下、公平に堂々とした態度を持って判決を下す。
テッドは裁判でまるでショーのように振る舞う。正直笑えるし、馬鹿馬鹿しい。そして傍聴席にいるテッドのファンたちは場違いな騒ぎ方をする。
しかし、判事は惑わされずに整然とした態度で接する。びっしりと発言をかまして黙らせる。

そこに敵意はなく、相手の瞳をしっかりと捉えて話す姿はこの映画における法の体現者であった。
人の道を離れたテッドが"モンスター"に対して、判事はそれを裁く"人"の象徴として描かれていた。

「砂漠の法廷」を批評した時、法廷に真実を追求する機能はなく、これが真実だと決定することしか出来ないと嘆いていた。しかし、今作では法による人の秩序を描いていて、少し救われた気分になった。

 

最後に

本編全体として、実際の裁判の証言を一言一句違えず引用することで、テッド・バンディが如何にして死刑になったかを鮮明に描き出していた作品でした。
ザック・・エフロンの一皮向けた狂気の演技、是非劇場でご覧ください。