劇場からの失踪

映画をこよなく愛するArch(Ludovika)による映画批評 Twitterもあるよ @Arch_Stanton23

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『世界の終わりから』劇場映画批評122回 大きな絶望と微かな"福音"

映画の冒頭、ポスターのイメージから圧倒的に乖離したモノクロで映される侍達の殺し合う時代劇的な映像に衝撃を受ける。現代劇じゃなかったか?と頭をよぎる間もなく、その映像の良さに目を奪われた。 完全なモノクロではなく寒色を少し残し、赤色がアクセン…

『ノック 終末の訪問者』 劇場映画批評121回 ロールを与えられた者たちの終末

大傑作大傑作大傑作!!!! シャマランの作家性である「見えざる事物との対峙」と「ロールを割り当てられた者達の物語」がフルスロットルで駆動していることに大興奮するだけでなく、会話ばかりのワンシチュエーションスリラーを極端なズームアップやインア…

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』劇場映画批評120回  今の人生を受け入れる

大傑作。本当に大好き。 1回の観賞じゃ絶対飲み込みきれない情報量。場面毎のテンションのアップダウンも激しくて、感情の浮き沈みがどう組み立てられているかも1回じゃ飲み込めない。それ故にか、シンプルでストレート結論やド派手な映像表現のみが心に焼き…

『フェイブルマンズ』映画の暴力性 劇場映画批評119回

大傑作。 最近特に「映画に関する映画」というのが続けて公開されている。それについては『エンパイア・オブ・ライト』のレビューで簡単に整理したので割愛するが、 本作はそれらの作品と完全に異質なことをやっていて、明らかに異常だ。

『The Son /息子』親もまた息子 劇場映画批評118回

本作は2021年の米国アカデミー賞を賑わせた『ファーザー』の監督、フローリアン・ゼレール監督の最新作である。元々監督本人が携わった戯曲に家族三部作(The father ,the son, the mother)があり、その二作品の映画化ということである。 三部作ということ…

『逆転のトライアングル』悲しみの三角のほうが絶対良かったよね 劇場映画批評117回 

全方向に喧嘩を売りまくり「特権を持った人間は浅ましい本性をさらけ出す」と語る。そこには富裕層と貧困層の垣根はないのだ。貧困層の人間がひとたび"特権"を持てば富裕層の如く特権を行使するという三章があるおかげで、プロレタリア的な視点だけではなく…

『ベネデッタ』システムに内在する欠陥を暴き出す 劇場映画批評116回 

実在の人物、修道女ベネデッタの記録に基づき描かれた本作は、彼女が真に狂信的な信仰を持つ存在であるが故に、キリスト教の欺瞞を仕組みの中から暴き出すのだ。彼女にその意図はなく、されど意図がないからこそ、その破綻は必然的に暴かれる。その非作為的…