劇場からの失踪

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『真 事故物件 本当に怖い住民たち』 「事故物件」よりは100倍マシ 劇場映画批評第45回

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題名:『真 事故物件 本当に怖い住民たち』
製作国:日本

監督: 佐々木勝己監督
公開年:2022年

製作年:2021年

 

目次

 

あらすじ

「事故物件に住み込み、幽霊をカメラに収めるまで帰れない!」
という企画の番組に 所属事務所から無理やり参加させられた
Youtuberとアイドルの卵。
彼女たちを待ち受ける、想像を絶する恐怖と激痛の数々。
日本犯罪史上最も凄惨なバラバラ殺人事件の現場だった
その伝説のアパートに潜んでいたのは、
おぞましき悪霊だけではなかった…。

引用元:

shin-jiko.com

今回紹介するのはジャパニーズホラーの新進気鋭佐々木勝己監督の最新作『真 事故物件 本当に怖い住民たち』である。ジャパニーズホラーは自分が最も浅いジャンルと言っても過言ではないため、今回初めて佐々木勝己という名前を聞いた。

自分はタイトルから中田秀夫監督の『事故物件 恐い間取り』みたいなしょうもない作品なのだろうと思っていたが、実際はその100倍はマシな作品に仕上がっていた。では早速語っていこう。

 

カタルシス

本作は前半と後半で、大きく分けて考えることができる。前半は事故物件に住むことになってしまった海老野心演じる女性の受難が描かれている。いわゆる愚かにも踏み入ってしまった人間が事故物件に住む霊に脅かされるという構図で、ジャパニーズホラーらしい恐ろしい展開が描かれていく。ただそんな前半の構図は、主人公の死と共に隣人の正体、ないし事故物件の全貌が判明することで変化し、「vs事故物件に住む狂人」となっていく。ただここには搾取する男性と搾取される女性という構図も含まれており、明らかに前半と後半では恐怖の対象が変わっていく。そのため、幽霊ホラーであった本作が最後には『デスプルーフ』的に終わるという異様な展開になっていくのだ。王道なホラー演出や過激なスプラッター描写が構図が変化していくことで、恐怖演出ではなくカタルシスに繋がっていく妙こそが本作の白眉だといえる。

 

残念な演出

ただ合間合間にある演出が残念であることは否めない。例えば「私の子供はどこ?」と言って出てくる霊のシーン。怖くもないし、長い。他に主人公が死んでしまうシーンでいきなり昼間になる辻褄の合わなさ。特に気になったのは洋楽の使い方。邦画において、洋楽を使うことはかなりリスキーで、一歩間違えればダサくなってしまう。本作は正にその典型で、上辺の雰囲気しか醸成できていなかった。またマネージャーの安藤の結末が描かれていないことも不満であった。

 

 

総評としては約80分にしてはしっかりと内容が詰まっている作品でした。