劇場からの失踪

映画をこよなく愛するArch(Ludovika)による映画批評 Twitterもあるよ @Arch_Stanton23

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『C.R.A.Z.Y』レコードに刻まれるは家族の行方 劇場映画批評77回

今回紹介するのは大好きなジャン=マルク・ヴァレの処女作である『C.R.A.Z.Y』である。クリスマスに生まれた四男のザックを主人公に、他5人兄弟とその両親の家族の物語で、『ダラスバイヤーズクラブ』でも描かれた同性愛を取り扱った作品でもある。 ジャン=…

『なまず/Maggie』虚実を跨ぐシンクホールとなまず 劇場映画批評76回

今回紹介するのはイ・オクソプ監督の『なまず/Maggie』である。主演は『野球少女』や『梨泰院クラス』で一躍有名となったイ・ジュヨン。ただ本作はそういった作品で知名度が上がる前に撮られており、イ・オクソプ監督の慧眼を認めざるを得ないだろう。 なん…

『ギルバート・グレイプ』家を支える柱は折れるのか 劇場映画批評75回 [12ヶ月のシネマリレー第一弾]

今回紹介するのは、レオナルド・ディカプリオ×ジョニー・デップの名作『ギルバート・グレイプ』である。本作は「12ヶ月のシネマリレー」という名作の復刻上映企画の第一弾として2022年8月公開された作品である。非常に面白い企画かつ、ほとんど自分が見たこ…

『きっと地上には満天の星』リトルに生えた翼 劇場映画批評74回

今回紹介するのは、「モグラびと ニューヨーク地下生活者たち」を原案として、ニューヨークの地下に実際に存在した人々からインスパイアされた『きっと地上には満点の星』である。セリーヌ・ヘルドとローガン・ジョージのコンビによる初長編作品である。短…

『ジュラシックワールド 新たなる支配者』どこまでも不誠実 /何を以て共存とするのか 劇場映画批評73回

今回紹介するのは『ジュラシックワールド』シリーズの完結編である『ジュラシックワールド 新たなる支配者』である。旧シリーズのキャストも登場し、旧シリーズも含めた堂々たる完結編として期待されていた本作、蓋を開ければ一切の期待に応えられていない駄…

『プアン友達と呼ばせて』人生最後のカクテル 劇場映画批評72回

今回紹介するのは、『プアン/友達と呼ばせて』である。監督は『バット・ジーニアス』のバズ・プーンピリヤ監督、エグゼクティブ・プロデューサーにはあのウォン・カーウァイが関わっており、二人の作家性が見事な化学反応を見せた作品になっている。 では早…

映画批評『ジュラシックワールド』-インドミナスレックスの悲哀-

今回紹介するのは2015年公開の『ジュラシック・ワールド』である。スピルバーグ監督の手掛けた『ジュラシックパーク』シリーズの正当続編として始まったシリーズの第一作である。新作に向けて久しぶりの鑑賞をしたので少し書いていこう。

『女神の継承』人を救うためには何ら機能しない 劇場映画批評第71回

今回紹介するのは『チェイサー』『コクソン』といった作品で製作,プロデューサーを務めたナ・ホンジンが手掛ける『女神の継承』である。『コクソン』の祈祷師・イルグァンをモチーフに幾段もパワーアップしたのが衝撃作が本作である。では早速語っていこう。

映画批評『仮面/ペルソナ』-「本当の自分」なるものは本当にあるのか-

ペルソナという題を持つ本作は、表情や感情等、一個人を定義する大多数を、あたかも映画(フイルム)かのように、人というスクリーンに投影する行為に他ならないとアルマとエリザーベットの同化への道程によって描いている。 アルマは看護婦で、エリザベート…

『グレイマン』最後にはドーンッ! 『コマンドー』でした!!! 劇場映画批評第70回

今回紹介するのはMCU作品で名を挙げたルッソ兄弟による新監督作品『グレイマン』である。主演にライアン・ゴズリング、そのライバル役としてクリス・エヴァンスをキャスティングし、スリリングなスタイリッシュアクションに仕上がっている。特にクリス・エヴ…

『こちらあみ子』何かが終わったけどまだまだ続くよ 劇場映画批評第69回

今回紹介するのは、『こちらあみ子』である。 衝撃。何に衝撃を受けたのかというと、自分が本作を観ていて思い出したのがアピチャッポンの『メモリア』と『二トラム』だったからだ。ただそれは映画の外形をなぞって感じた感想で,中身は全くもって違うので本…

『X エックス』sexは若者の特権行為なのか 劇場映画批評第68回

今回紹介するのはA24Filmが送り出す新作ホラームービー『X エックス』である。既に三部作が構想されており、その第一作が本作だ。 第一作がコケたらどうするのか、かなりの自信作と受け取ってよいのか、とハードル高めで劇場に足を運んだが、これが思いのほ…

『哭悲/The Sadness』最悪を想像するとき、人は笑うのだろうか 劇場映画批評第67回

今回紹介するのは、ロブ・ジャバス監督の長編デビュー作となる『哭悲/The Sadness』である。台湾の街を舞台としたパニックホラーで、ルックはゾンビ映画ながらも明らかに異様な"別次元"の作品に仕上がっている。人はただの血の詰まった肉袋、大脳辺縁系に制…

『ソー:ラブ&サンダー』「愛」とか「神」とかの曖昧さ 劇場映画批評第66回

今回紹介するのはマイティー・ソーシリーズ第四作である『ソー:ラブ&サンダー』である。前作の『マイティー・ソー:バトルロワイアル』のタイカ・ワイティティ監督が続投し、相変わらずの極彩色でコメディーに振り切った快作になっている。ただ今回はかなり…

『エルヴィス』バズ・ラーマン式ライドのムービーの極地 劇場映画批評第65回

今回紹介するのはバズ・ラーマン監督の『エルヴィス』である。現在のロックの形を作ったと言っても過言ではない、元祖「キング・オブ・ロック」のエルヴィスの人生を栄光の表側だけでなく、晩年や苦悩の私生活をトム・パーカー視点で描きだしていく。あまり…

映画批評『ムーラン・ルージュ』-過去の持つフィクション性-

特殊撮影と豪華絢爛な舞台によってまるでアトラクションに乗っているかのように進んでいくライド型ミュージカルムービーであった。 この映画の異質さはまず音楽にある。20世紀初頭1899年のムーラン・ルージュを舞台にしているにもかかわらず作中で歌われるの…

『わたしは最悪。』わたしは主人公になる 劇場映画批評第64回

今回紹介するのはヨアキム・トリアー監督の『わたしは最悪。』である。ノルウェー産のラブコメディーである本作は、女性のリアルな恋愛事情、果ては人生観を映画ならではの手法で描き出しており、話題を博している。では早速語っていこう。

『PLAN75』若者を数十年後の当事者ではなく、今の当事者にすべきだ 劇場映画批評第63回

今回紹介するのは早川千絵監督の『PLAN75』である。2022年カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で正式出品の快挙を既に成し遂げており、高い評価を受けている。現実の少子高齢化問題と地続きのテーマを扱う本作は、多くの人にとって他人事ではない。まるでデ…

『ALIVEHOON アライブフーン』 ゲームと実車は大して変わらない 劇場映画批評第62回

今回紹介するのはドリフト業界が総力を掛けて撮ったCGなしのドリフト映画『ALIVEHOON アライブフーン』である。 レースゲームのeSportsで日本一だった男が実車のドリフトチームにスカウトされ日本一を目指す、というお話である。 最初はゲームと実車は違うと…

『三姉妹』役割からの開放、過去からの解呪 劇場映画批評第61回

今回紹介するのはイ・スンウォン監督の『三姉妹』である。韓国のドラマや映画で実力が注目されている「愛の不時着」キム・ソニョン、「オアシス」のムン・ソリ、「ベテラン」のチャン・ユンジュが三姉妹を演じる本作は、兼ねてから期待していた作品である。…

『ベイビーブローカー』観覧車はどこにも運んでくれはしない 劇場映画批評第60回

本作は「捨て子」を養子として売ることで金稼ぎをする人たちの物語だ。 是枝裕和監督が韓国資本で「韓国映画」として作った作品で、カンヌ国際映画祭にて主演男優賞出評価されており、既に高い評価を受けている。 私は是枝裕和監督作品について詳しくはない。見…

映画批評『アダプテーション』-ハリウッド的な映画に対するチャーリーの回答

アダプテーションはこの作品において「適応」と「脚色」を意味する。本作を生み出したチャーリー・カウフマンはそのアダプテーションという行為と自らの分身を媒介して、脚本が如何に滑稽で崇高なプロセスを経て、生み出されるのかを自伝的かつ自嘲的に、しかし…

『メタモルフォーゼの縁側』変われることは幸せ、変わらないことも幸せ 劇場映画批評第59回

今回紹介するのは、芦田愛菜&宮本信子 主演『メタモルフォーゼの縁側』である。年の差のある二人がBLコミックという趣味を通して、交流していく様を描く物語だ。 正直、「完全に舐めてた」案件でした。本当に面白かった。「好き」を誰かと共有すること、「好き…

映画批評『コラテラル』一寸先の闇がトム・クルーズ

今回紹介するのは久しぶりの自宅鑑賞作品。作品はマイケル・マン監督の『コラテラル』である。2022年6月時点、最高の盛り上がりを見せている『トップガン マーヴェリック』で完全に魅せられた私は、トムの過去作を物色、その中で見つけたのが本作である。ト…

『ナワリヌイ』悪人が勝つのは、ひとえに善人が行動を起こさないからだ 劇場映画批評第58回

今回紹介するのは、"プーチンが最も恐れた男"として知られるロシアの反体制派の象徴アレクセイ・ナワリヌイを追ったドキュメンタリー『ナワリヌイ』である。本作はウクライナ侵攻が行われている現状を鑑みて、日本で緊急公開された作品ということもあり、と…

『生きてて良かった 』ただ憧れた瞬間に後悔しろ 劇場映画批評第57回

今回紹介するのは鈴木太一監督の『生きててよかった』だ。中国で活躍する木幡竜を主人公に、引退したボクサーの人生を描いた物語を描いている。非常に面白く、ボクサー映画を越えた射程を感じる映画であった。では早速語っていこう。

『ニトラム/NITRAM』ある殺人者についての考察 劇場映画批評第56回

今回紹介するのは、ジャスティン・カーゼル監督の最新作『ニトラム/NITRAM』である。オーストラリアの観光地ポートアーサー流刑地跡で起こった無差別乱射事件を、犯人の視点で"その日"に至るまでの過程を描くことで考察する内容となっている。監督曰く、この…

『ベルファスト』子供時代を子供らしくいられたことへの感謝 劇場映画批評第55回

今回紹介するのはシェクスピア俳優や、『マイティ・ソー』等の監督としても知られているケネス・ブラナー監督の最新作『ベルファスト』だ。北アイルランド、ベルファストで実際に起こったカトリックvsプロテスタントの抗争に巻き込まれた少年を、オートフィ…

『TITANE/チタン』変化する肉体への恐怖 劇場映画批評第54回

今回紹介するのは、2021年のカンヌで最高賞を受賞した『TITANE/チタン』である。「車とセックスして妊娠する」という設定が唯一無二の作品にしているが、本質はもっと先にある。果たしてどこまでこの映画は連れて行ってくれるのか。それでは語っていきましょ…

『アンビュランス/Ambulance』救命の尊さをベイが描くとこうなります 劇場映画批評第53回

今回紹介するのは、マイケル・ベイの最新作『アンビュランス/Ambulance』だ。ジェイク・ギレンホールとヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が兄弟を演じ、事件に巻き込まれる救命士を演じるのはエイザ・ゴンザレス。これまでのフィルモグラフィーのキャストと…