劇場からの失踪

映画をこよなく愛するArch(Ludovika)による映画批評 Twitterもあるよ @Arch_Stanton23

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『茶飲友達』孤独は癒せない 劇場映画批評106回 

今回紹介するのは実際に起きた高齢者売春クラブの事件にインスパイアされた『茶飲友達』について語っていく。

『イニシェリン島の精霊』此岸の自分と彼岸の相手 劇場映画批評105回 

今回紹介するのは『スリービルボード』のマーティン・マクドナーの最新作、『イニシェリン島の精霊』である。今回は「渡る」というキーワードを軸に批評を展開していく。では早速語っていこう。 「渡る」という行為は此岸から彼岸へと移る行為であり、言い換…

『グッドバイ、バッドマガジンズ』エロ雑誌は毛嫌いされるのにSEXはみんな好きですよね?劇場映画批評104回 

東京オリンピックの開催と共に海外向けの面子の為に、コンビニから消えることとなった男性向け成人雑誌。元から斜陽産業だった雑誌の中で、"エロのデジタル化"が進み、更にオワコン化が激化していた成人雑誌には、それはトドメであった。 本作はそんな成人雑…

『ボーンズ アンド オール』「自分以外の人生について知ること」 劇場映画批評103回 

自分の大好きなフィルムライクなルック、キャスト、ロードムービー、アティカス・ロス&トレント・レズナー劇伴…でありながら、どこか納得のいかない映画というのが率直なところ。それはルカ・グァダニーノ監督由来の「若者の特権」と「食人種の悲哀」なのか…

『ザ・メニュー』純化した提供者(芸術家)と消費者(観客)の関係を求めて 劇場映画批評102回 

ほんと自分みたいな口だけ自称映画評論家(笑)みたいな人間には耳が痛い話でした。そうと分かりつつも感想書いてしまうのをどうか笑ってください。

『ヒトラーのための虐殺会議』会議には前提がある 劇場映画批評101回 

会議を扱った作品は数あり、個人的には『十二人の怒れる男』を一番に思い出すのだが、本作はそういった作品と比べるとあまりに"会議"として純化され過ぎている。 劇伴がまずない。 会議における肝心な場面、或いは各人の思惑の衝突が激化する場面で、本来の…

『ノースマン/導かれた復讐者』三つの言葉の変化 劇場映画批評100回 

独創的でパラノイア気味なインディーズ作品を手掛けてきたロバート・エガースが初のビックバジェットムービーに挑戦する。それも北欧神話に基づく復讐の英雄譚。バイオレンスな部分は共通しているものの今回はアクションに振って娯楽大作という趣きになって…

『そして僕は途方に暮れる』映画の主人公になるには 劇場映画批評99回

こんなはっきりしなくて情けない謝罪シーン見たことないよ!!とにかく全部から逃げて逃げて逃げまくって、奮起して頑張った末が「変わろうとしてるけど約束できないです」とか「なんかでしかないんだけどごめんなさい」とか「頑張ってみようと思います」と…

『ディヴォーション:マイ・ベスト・ウィングマン』マーヴェリックのなし得なかった着陸と格差の物語 劇場映画批評98回

去年、アクション映画、特に戦闘機映画の一つの最高到達点として『トップガン マーヴェリック』が生まれた。その中で去年Netflixで米国で配信され、今年日本でも配信された本作は明らかに分が悪いのではないか?『大怪獣のあとしまつ』と『シンウルトラマン…

『フラッグ・デイ 父を想う日』ライ麦畑で捕まえてほしい願望ってあるよね 劇場映画批評97回

今回紹介するのは、名優ショーン・ペンが監督として手掛けた『フラッグ・デイ 父を想う日』である。彼の監督作品は基本的に全部好き(※前作だけ見ていない)なので、今回も楽しみにしていた。はっきりいって大傑作だった。映画の技巧をもちろんのこと、テーマ…

『ケイコ 目を澄まして』模倣して繰り返すことで彼女は人生を闘う 劇場映画批評96回

今回紹介するのは、『君の鳥はうたえる』の三宅唱監督の最新作、『ケイコ 目を澄まして』である。邦画の中でもボクシングムービーは傑作率が高く、非常に楽しみにしていたが、予想を大きく超える大傑作であった。監督への信頼は元から厚く、主演は大好きな岸…

『ファイブ・デビルズ』嗅覚が呼ぶ災厄 劇場映画批評95回

題名:『ファイブ・デビルズ』製作国:アメリカ 監督:レア・ミシウス監督 脚本:レア・ミシウス ポール・ギローム 音楽:フロレンシア・ディ・コンシリオ 撮影:ポール・ギローム 美術:エステ・ミシウス公開年:2022年 製作年:2021年 目次 あらすじ 説明不足 確か…

『グリーン・ナイト』自然へと還る、死へと向かう 劇場映画批評94回

円卓の騎士の一人、ガウェインを主人公とした「緑の騎士」の伝説を映画化。原作については全く情報なしで、デウィット・ロウリーの新作ということで期待MAXで鑑賞。 結論からいうと、最高の映画体験であった。

『ある男』他人として生きたい 劇場映画批評93回

『愚行録』の石川慶だった、というのがまずの印象だった。妻夫木聡を主演にして、彼が"無意識の悪意"に晒され続けて、遂に一線を超えてしまうような感覚はまさに愚行録の田中武志だし、妻夫木聡の強みはこの"透明な存在感"なのだと観ていて唸らされた。だか…

『恋人はアンバー』何度だって石を投げてあげるわ 劇場映画批評92回

今回紹介するのは『恋人はアンバー』である。個人的に非常に注目しているデビット・アンバー監督の最新作がようやく日本公開され、嬉しい気持ちでいっぱいである。さて、同性愛の男女が偽装カップルになるという前作『CURED』とは違った趣の作品であるが、デ…

『ドント・ウォーリー・ダーリン』50sの幸せと今の幸せ 劇場映画批評91回

今回紹介するのは、『ドント・ウォーリー・ダーリン』である。『ブック・スマート』で劇的な監督デビューを遂げたオリヴィア・ワイルドの二作目である本作は、『ブックスマート』とは違い、不穏な予告編が印象的だった。フローレンス・ピューやハリー・スタ…

『RRR』お前のレベルには落ちない ここまで上がって来いよ 劇場映画批評90回

圧倒されるとはこのことである!! 物語の基本骨子が単純(王道)だからこそ、相反しながら共鳴する二項対立が分かりやすく、摩擦するかのごとく熱を帯びていく。またその単純な構造の背景にある抑圧されたイギリス植民地時代のフラストレーションを映画の力で…

『アフターヤン』「喪失」を引き伸ばしていった先で 劇場映画批評89回

『コロンバス』のココナダ監督による静寂と喪失の話。大傑作だった。 舞台はクローンやアンドロイドである"テクノ"などが人間のように生活する近未来。白人の夫と黒人の妻、アジア系の養子の娘、そしてテクノのアジア系の兄の4人家族で、ある日テクノである…

『夜を越える旅』彼女は変容する 劇場映画批評88回

今回紹介するのは『夜を越える旅』である。 うだつの上がらない人生を送る売れない漫画家の1夜の群像劇は、一転ホラーへと変貌していく。 そのジャンルのスイッチはどこにあったのか、夢と現実の境界はどこにあるのか。 佐賀の魅惑的なロケーションも相まっ…

『スペンサー ダイアナの決意』"視戦"の最中だからこそ、子供と見つめ合う視線は尊いのだ 劇場映画批評87回

今回紹介するのは『スペンサー ダイアナの決意』である。 個人的には今年の『燃ゆる女の肖像』枠だ。完璧に構築された本作には相応しいだろう。 ダイアナ妃のクリスマス前後3日間の物語を描いた本作は、ダイアナ妃と王室の確執に焦点を絞り、今にも窒息しそ…

『LAMB』目を背けるためのピアノ 劇場映画批評86回

今回紹介するのはA24製作の新作映画『LAMB』である。登場するだけで不穏さを醸し出すこと請け合いのノオミ・ラパスを主演に、半人半羊の子供が登場する予告編など期待値の高まり、界隈でもかなり話題になった作品である。 では早速語っていこう。

『よだかの片想い』人は服を着てその痣を隠せる生き物だから 劇場映画批評85回

これまでいくつものフィクションにおいて身体に傷を抱えていたり、見た目に特徴的な部位がある登場人物に「よだかの星」はモチーフとして当てられてきた。 それが何故かと言うと、「よだかの星」という物語の結末が、もたらす悲壮感が登場人物の現在の心境を反…

『激怒』貯めたフラストレーションは全て噴き出すのか 劇場映画批評84回

今回紹介するのは、映画好きにはお馴染みの映画ライター高橋ヨシキの初監督作品。 旧友である川瀬陽太を主演に、遠くない現実と地続きなディストピア世界に「怒り」を噴き出す物語となっている。高橋ヨシキらしいテーマ設定、ジャンルムービー感が魅力の作品…

『LOVELIFE』部屋の記憶 劇場映画批評83回

今回紹介するのは、『よこがお』等で世界的にも評価されている深田晃司監督の最新作『LOVELIFE』である。矢野顕子が1991年に発表したアルバム「LOVE LIFE」に収録された同名楽曲をモチーフにした本作は、その曲を映画のラストに流すため、逆算的に作ったとい…

『裸足で鳴らしてみせろ』触れることは、相手を感じること、手に入れること、実感すること。そして突き飛ばすこと、傷つけてしまうこと、束縛すること、現実に引き戻してしまうこと。劇場映画批評82回

今回紹介するのは、PFFスカラシップ第27回作品である『裸足で鳴らして見せろ』である。『オーファンズ・ブルース』で監督デビューした工藤梨穂監督の長編二作品目の本作は、旅をする物語を撮りたかったという監督の考えを発端にしながらも、蓋を開けてみれば…

不可視の事物と対峙してきた監督 M・ナイト・シャマラン監督特集

今回は監督特集第三弾として「M・ナイト・シャマラン監督(以下シャマラン)特集」を行っていきたい。スリラーの鬼才と呼ばれた監督の過去12作品に加えて、最新作『オールド』に至るまでの全13作品のフィルモグラフィーを考察し、シャマラン監督の作家性という…

『ブロークン・ジェネレーション撲殺!射殺!極限の暴力少年たち』 月曜日は人生の終わり 劇場映画批評第81回

今回紹介するのは、ペネロープ・スフィーリス監督の『ブロークン・ジェネレーション撲殺!射殺!極限の暴力少年たち』である。『アメリカン・グラフティー』のような青春映画と『地獄の逃避行』のような逃避行映画を繋ぐ地平に立つ本作は、特異点的な作品で…

『ブラック・フォン』子供達が子供たちの為に、子供達の力だけで 劇場映画批評80回

今回紹介するのは、スコット・デリクソン監督の最新作『ブラック・フォン』である。『ドクター・ストレンジ』などで有名な彼は、その続編の監督をする代わりに本作の監督についた。非常にウェルメイドなホラー作品に仕上がっていて、誰にでもおススメできる…

『NOPE/ノープ』スペクタクルに向かってを撃て 劇場映画批評79回

今回紹介するのは『ゲットアウト』や『US』で一躍ホラージャンルに革新的な潮流を生み出したジョーダン・ピール監督の最新作、『NOPE/ノープ』である。NOPEというタイトルは簡単に言えば、「もう無理!」という感じのきっぱりNOを突きつける形の否定表現であ…

『彼女のいない部屋』彼女の逃避行には目的地はない。ただ春に終わる。 劇場映画批評78回

今回紹介するのは、俳優としてもフランスを中心に活躍しているマチュー・アマルリック監督の最新作、『彼女のいない部屋』である。主演は『ファントム・スレッド』などで有名なビッキー・クリープス、非常に難しい役どころを繊細に演じていた。 ネタバレ無し…