劇場からの失踪

映画をこよなく愛するArch(Ludovika)による映画批評 Twitterもあるよ @Arch_Stanton23

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『別れる決心』溺れておぼれて、潤う 劇場映画批評113回

ヒロインであるソレはイジュンに孔子からの引用を口にする。 作品内でどう字幕されていたかは定かではないのだが、同じ意味のものをネットから拝借する。 「知人は水を楽しみ、仁者(道徳的に完璧な人)は山を好む。」 この言葉を踏まえて本作をみると、なん…

『コンパートメントNo.6』その列車はタイタニックの真逆へ進む 劇場映画批評112回 

『タイタニック』見た事ある?という作中での言及がされたとき、本作は『タイタニック』の真逆の作劇を行っているのだと気づいた。 二作品には共通点がある。基本的には乗り物に乗っている時間がほとんどであり、初対面の男女が関係を深めていくという話にな…

『対峙』被害者と加害者、その親 劇場映画批評111回 

上映開始5分。既に充満している緊張感は、教会の奥の一室で始まる「対話」が、複雑な関係性で結ばれた者同士の間で起こることを予感させる。この時点でもう、私はこれから始まる「対話」に耐え切れるのか不安に押しつぶされそうになった。

『少女は卒業しない』4人の少女は卒業を廻る 劇場映画批評110回 

卒業を目前とした高校生達(主に女子高生が中心)は"終わり"を前にして何を想い、何を選択するのか。 4つの人間関係が作中でフォーカスされるなか、片や卒業を待ち遠しくしている人、片や卒業したくないと考えている人、そして卒業が=別れである人。 卒業を…

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』彼女は「聴き分ける」 劇場映画批評109回 

本作は何よりも"声"にひたすら向き合う映画だ。 ハーヴェイ・ワインスタインという映画界の絶対権力者の犯罪を暴き出す為に、NYタイムズの記者達(特に主人公たちミーガンとジュディ)が行った手段はひたすらに"声"を聴くことだ。声とは証言であり、告発であ…

『バビロン』何かが生まれるということは何かが死ぬということ 劇場映画批評108回 

これは"時代"が破壊する文化や人生とそこから芽吹き、新たに続いていく文化や人生への賛歌だ。 人は時代という大いなる流れを前に無力。だが、一個人同士が感情や肉体をぶつけ合い、一つの集合体へと至る時、そこに帯びる熱こそが時代の突き動かす燃料となる…

『ヒトラーの死体を奪え』歴史を作るのは生きた者の記憶 劇場映画批評107回 

ヒトラー(ナチス)は定期的にぶちのめして笑いものにすべきと考えているので、ヒトラーものは必ず劇場に行くことにしてる。 最近だと『ペルシャン・レッスン』や『アウシュビッツのチャンピオン』等が公開されている訳だが、その中でも本作は極めてよくでき…